cry no color

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何度でも書き記そう。六月は夏、だけど、夏はこれから。だけど、予感は実感を呼ぶには十分。かすかに濡れた草のにおい、半そでの季節、汗。混み合う車内から見える空は曇。暑苦しくふさがれている。雨なのかそうでないのか、ガラス越しでは判別できない。昔は嫌いと思っていたけど、いつのまにかほんとうに好きになってしまった。そのことを考えたり。

雨はつまらない景色にも質感を与える。からっと晴れた日のもとでは無味無臭で平坦な景色にもドラマを与える。レンズは光を透し、映す、いかにも単純な仕掛けなのだけれど、新しく匂い立つ街並みにいつも心地よい陶酔を覚える。バニラの香りを嗅ぐような、頭痛がしそうな陶酔ではなくて、程よく抜けた炭酸水を一気飲みしてしまうような、清かなそれ。

 

会いたい人はもういない。会いたい人にはもう会った。見知らぬ誰かのことを考えたりしない。行きたいところは行けるところになって、行きたいときに行く。約束はあまりしない。夢もあまりない。欲望に飲まれそうになったりしないかわりに、ひそかで小さな欲望の芽が、育つのを待っている。ぜったいに叶える、というつよい言葉を選ばなくても平気になった。私は魔法にかかったりしないで、油断したので大人になったのでした。

どんな日々をおくっていると、誰に教えたいだろう。眩しい熱は眠りに。手紙でも書けば、また違うだろうか。どうせ読み返さない、引き出しの奥に、答えはあるでしょうか。

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